1.線虫C. エレガンス: 生物学の研究に適したモデル実験動物
線虫C. エレガンスは、生命現象の研究に適したモデル実験動物のひとつです。
その体長は、約1mmで土の中の細菌などを食べて生活しています。卵から成虫になるまでがわずか3日と早く、雌雄同体(稀に雄が存在)のため、遺伝学的な解析に便利です。C.エレガンスの体は、わずか959個の細胞からなり、そのうち302個が神経細胞です。体が透明ですので、受精卵から成虫になるまでの、全細胞の分裂パターンと全細胞の位置が同定されています。
こ のように、線虫はシンプルな動物なのですが、その遺伝子の種類と数はヒトと類似しているため、ヒトの医学にも通じる発見がたくさん行なわれています。例え ば、線虫の研究から、「プログラム細胞死」や、「RNA干渉の発見」、「GFPの生体応用」が行なわれ、2002年から2008年の間に、線虫の研究者6名がノーベル賞を受賞しました。
近年、神経系の解析においても、線虫が注目されています。線虫が、神経系の解析に優れている点として、神経系を構成する全神経回路が同定されていることがあげられます。具体的には、頭部から尾部までを約3万枚の切片にし、その電子顕微鏡写真をコンピューター内で再構築することで、約5000個の化学シナプスと、約600のギャップ結合から構成される「全神経回路網」が明らかにされています。